一般的には危険のことですが、保険では2通りの意味で使われます。 ひとつは保険契約で担保するべき危険、すなわち保険金支払に至る保険事故の発生の可能性のことですが、 もうひとつは事象の不確実性のことで、具体的には危険発生の確率分布における分散のことです。 2つめの意味でのリスクは証券投資におけるボラティリティと同義語です。 リスクの大きさを数字で表したものをリスク量といいます(リスク量とは) 複数のリスク量を統合することができますが、これは単なる足し算とはなりません( リスク量の統合)
損害保険契約は偶然の事故により損害を被ったときにその損害をてん補してもらう契約です。火災保険や自動車の車両保険、 あるいは盗難保険のように自分の所有物に関する損害を支払ってもらう保険を物保険といいます。 これに対して傷害保険や医療保険などのように人の身体に関する保険を人保険といいます。 また他人の権利を侵害して賠償責任を負った場合に、これを支払ってもらう賠償責任保険(自動車の対人賠償保険など) や偶然の事故によりかかった費用を支払ってもらう費用保険、事故により営業を継続できなくなった場合に失った利益を支払う 利益保険などがあります。
保険契約を結ぶ当事者の一方で保険者(保険会社)でないほう。保険料を支払う義務と保険を解約する権利、 および解約した場合に解約返戻金を受け取る権利があります。
生命保険と損害保険では被保険者の意味が違います。
生命保険では死亡や傷害などその人の生死や健康状態が保険金の支払対象になる人を被保険者といい、
保険金は保険金受取人に支払われますが、
損害保険では事故の発生により保険金を受け取る権利が発生する人を被保険者といいます。
つまり、火災保険などでは保険の目的である家屋の所有者、傷害保険では死亡や傷害がおきたときに保険金を受け取る人です。
もっとも損保の場合でも保険に質権や抵当権を設定すると被保険者以外に保険金が支払われます。
例えば銀行から住宅ローンを借りて家を建て、火災保険を付けて質権設定を行うと、
被保険者は家の持主でも火災が起きたらローンで借りている金額の範囲で保険金は銀行に支払われます。
保険金支払いの最大値、つまり火災の全焼あるいは盗難などにより保険の目的の価値がすべて消失したときに支払われる保険金の金額。 通常は保険価額と同じになるように設定しますが、保険価額よりも保険金額が小さい場合を一部保険といいます。 傷害保険や賠償責任保険など保険の目的の価値が定められない場合には保険金額の代わりにてん補限度額を定めます。
火災の全焼あるいは盗難などにより保険の目的の価値がすべて消失したときに被保険者が被る損害の額。つまり保険の目的の価値。
保険契約により保険会社にリスクをカバーしてもらうために支払う費用。つまり保険を買うときに支払う料金。 新聞記事などでもよく「保険料」と「保険金」を混同していることがあります。
保険料は保険金の原資となる純保険料とその他保険の運営に必要な付加保険料に分けられることは既にのべました。
その純保険料は簡単に言うと事故発生確率(Frequency)×損害額(Damageability)で計算され、これをFD法といいます。
FD法による純保険料は事故による損害額の期待値となっているため、 長い期間をみれば保険会社の集める純保険料の合計金額は支払った保険金の合計金額と等しいという収支相当の法則が成り立ちます。
しかし、どのくらいで収支相当となるかは保険の種目によりまちまちで、自動車保険や傷害保険などは数年単位でも成り立ちますが、 自然災害を担保するような保険では大地震などは数百年に1回というサイクルなので、収支相当も数百年待たないと成り立ちません。 そこで保険会社は異常危険準備金という積立金で大災害に備えるのですが、これは純保険料には含まれません。 なぜなら、数百年に1回の大災害のファンドも純保険料には含まれているからで、 異常危険準備金がなくても数百年単位では収支相当の法則が成り立つからです。
保険によっては安全割り増しという名目で統計上の期待値をこえる部分のファンドを純保険料に入れている場合もありますが、 これは統計が不十分で真の期待値がわからないから割り増しをしているわけで、異常危険準備金とは性質が異なります。
「超過保険」は東京海上日動が販売している「超保険」とは全く別物です。保険金額が保険の目的の価値(保険価額)よりも大きい契約のことをいい、 旧商法では保険の目的の価値を超えた部分は無効とされていましたが、 現在の保険法では保険契約者および被保険者が善意で重大な過失がないときは超過部分を取り消す(つまり保険料を返還してもらう)ことができます。 そもそも損害保険は損害をてん補する契約なので、そのものの価値を超える損害はありえないからです。 ただし、保険価額をあらかじめ約定しておく保険もあり、この場合は超過保険とはなりません。 人の命に値段はなく、また生命保険は損害をてん補する契約ではないので、生命保険には超過保険の概念はありません。
2つ以上の保険会社が共同で保険を引き受けること。幹事会社が契約手続きや保険金の支払いをやるので1つの保険にみえますが、
契約上はそれぞれの会社が独立して支払責任を負う2つ以上の契約となります。
昔はほとんどの保険が独占禁止法適用除外だったので問題なかったのですが、
現在は自動車損害賠償責任保険(強制保険)や地震保険などの例外を
除けばほとんどが独占禁止法を適用されるので、
保険会社間で約款や保険料などの契約条件を合わせる行為は独禁法上のグレーゾーンになっています。
保険会社が自分の引き受けた保険のリスクの一部または全部について別の保険会社から保険を買うこと。
大規模な工場や航空機、船舶などいったん事故が起きると多額の損害が発生する場合や、台風、地震など地域全体に広がる自然災害などに備えて経営を安定化させるために行われる。
契約を決まった割合で引き受けるクォータシェア、保険金額の大きさに応じて一定額を引き受けるサープラス、損害が一定額を超過した場合にその超過部分を支払うエクセスロスなど
いろいろな支払いのバリエーションがあり、再保険だけを行う再保険会社もあります。(日本ではトーア再保険、日本地震再保険)
地震保険のように政府が再保険を引き受ける場合もあります。
保険料の計算の基礎となる数値で、予定損害率、新契約比率、維持費率などで、長期保険の場合はこれらに加えて予定利率、予定契約消滅率、予定保険料免除発生率などがあります。
1年を超える長期の保険の場合、将来の事故の支払いにつかう資金はその事故が発生するまでに運用で増やすことができるため、その分割り引いてあります。その割引計算に使う利率のことをいいます。
介護保険やこども保険などは一定の事故(介護保険では介護状態になった場合、こども保険では親を死亡した場合)が発生すると保険料の支払いが免除されますが、その保険料免除の発生率です。
火災、落雷、爆発など火災保険の基本的な担保条項をいいます。火落爆のみを担保する昔ながらの火災保険をストレートファイアーと呼びます。現在の火災保険は火落爆だけでなく風水害や盗難などいろいろな担保のついた総合保険がほとんどです。
普通保険約款の略で、保険を買うと必ずもらえます。これは保険の契約書であり保険金を支払対象となる災害や支払の条件など、保険契約上必要なことが規定してあります。最近は紙に印刷された約款ではなく、インターネットで見るウエブ約款というのもあります。普通保険約款で担保される範囲の契約を主契約といいますが、これに担保危険などを追加するとき(特約の付帯)には特約条項という約款を使います。 最近のインターネット販売などでは書面を配布する代わりにホームページにアクセスして見るようになっているものもあります。
地震火災費用保険金の略で、地震・噴火またはこれらを原因とする津波で火災が発生し、保険の目的である建物が半焼以上あるいは家財が全焼となったときに、保険金額の5%(300万円限度)が支払われる火災保険の保険金です。
臨時費用保険金の略で、火災にあったときに宿泊費など臨時の出費に対して支払われる火災保険の保険金です。
残存物取片づけ付費用保険金の略で、火災の焼け跡を片付けるための保険金です。
人身傷害保険の略で、自動車保険で死傷したとき相手(加害者)から賠償を得られない場合に補償する保険です。
ネクラではありません。デクラレーション(Declaration)の略で通知保険(商品や在庫品などの常に数量が変動するもののための保険で、定期的に在庫量を保険会社に報告する)のことです。
通常は毛布のことですが、保険で使った場合は包括契約(泡沫契約ではありません)のことで、ひとつの保険証券で複数の保険の目的を担保する契約をいいます。例えば1枚の保険証券で全国各地にある複数工場の建物を担保します。証券は1枚ですがそれぞれの工場の建物や機械の保険金額については明細書がつきます。
小損害免責のひとつで損害額が保険金額の一定割合を超えないかぎり保険金が支払われないという免責条項。エクセスと異なり損害が一定割合を超過すると全額が支払われる。小額支払は保険金そのものより支払うための事務経費が大きくなるためにこの条項がある。なぜこう呼ぶのかは不明。
小損害免責のひとつで損害額が保険金額の一定の金額割合を超えた場合に、その超えた部分が支払われるという免責条項。
コインスには下の3つの意味があります。どの意味で使われているかは前後の文脈で判断します。
複数の保険会社が共同して保険を引き受けること。保険証券は1枚だが契約上は複数の保険会社がそれぞれ独立して保険を引き受けることとなっている。
常に損害額の一定割合の保険金が支払われる契約
保険価額の一定以上の保険金額である場合に損害額全額が支払われ、それ以外は比例てん補(保険価額に対する保険金額の割合で保険金を支払う)となる契約。
共同保険や再保険で決済のために幹事会社や相手会社から送られてくる明細書でもともとはフランス語です。
自動追加担保特約条項の略です。特約というのは普通保険約款にはない特別な担保や特殊な引受条件を契約に付ける付加的な約款ですが、 これを自動的にすべての契約につけてしまうのが自動追加担保特約条項です。なんでこんなことをするかというと、新しい担保をサービスで 付ける場合に普通保険約款を改定するには金融庁から変更認可を受けなくてはならず、時間もかかり、また普通保険約款を手直しするには大変な手間がかかるからです。 小規模な変更の場合、次の普通保険約款の改定までは自動追加担保特約条項でしのぐという手が使われます。(最近はあまり使われなくなっている)
卓上コンロのことではありません。先輩に聞いた話ではその昔、保険会社の資金管理はいい加減で、 飲み代が足りなくなると架空の火事で保険金を支払ったことにして資金を浮かしていたというものです。 今となっては証拠も何も残っていませんから、ホントかウソかはわかりませんが、 飲み代ではなく代理店の手数料を規定より多く支払うために1956年に某社で帳簿上の架空の火事で資金を捻出したという事件が 「テーブルファイアー事件」として某大学の論文に載っているので、これは実際にあったことのようです。
保険会社(の営業社員)にとってどうでもよいという単価の低い契約。 ただし、効率よく大量に契約獲得できれば損害率が安定し収益に繋がる。
営業ノルマを達成するために自分自身で必要もない保険に加入すること。 営業社員がノルマに対する自己責任をとっているようで一瞬美徳に見えるが、 これが起きるようではいずれ強引な勧誘や不祥事に繋がるリスクが大きい。
福利厚生プラン。かつて市中金利が高かった時代にノンバンクから借金した金で一時払積立保険を買うようにセットされた商品。
ノンバンクが保険募集チャネルとなり強引な貸付等も起きたので当局から自粛令が出た。
事故が起きた後で保険をつけて保険金を騙し取るという保険金詐欺の一種。
いかにもですがネイティブスピーカーに確認したところ、やはり和製英語でした。
昔、海上保険などで営業社員が預かった申込書と保険料を会社に渡さず、
船が目的地に無事着いたら申込書を破棄して保険料をせしめることがあったそうですが、
これなども事故があったときは保険金請求するのでアフロスの変形とみることができます。
自賠責保険でも「きれいな書損」といわれる同様な事件がありました。
こちらは正真正銘の英語で、代理店または契約者の故意、不正、法律違反による損害発生のリスクにさらされることです。 例えば高額な美術品など真贋や実際の取引価格がわかりにくいものに保険をつけるとモラルリスクを誘発しやすい。 常識とくらべて異常に保険金額の高い契約や経営不振の会社の社屋なども保険金詐欺の対象となりやすいモラルリスクです。
Financial Service Agencyの略で金融庁のこと。昔は監督官庁が大蔵省だったのでモフ(MOF:Ministry Of Finance)といった。
昔は各社にMOF担(モフタン)と呼ばれる大蔵省担当者がいて、せっせと大蔵省に通って金融検査などの情報集めや人脈つくりを専門に
やっていたが、
ノーパンシャブシャブ事件
等の不祥事が明るみに出て以来廃止され、現在では金融庁の担当官とは原則として
業務以外で個人的には接触できないことになっている。以前は通行証を持っているモフ担はアポなしで大蔵省に行き廊下から
担当官の様子を伺って席にいれば入室して話ができた。そのためどの担当官と会っているかでその会社の折衝の中身が
バレないよう大蔵省に行く社員はみな社員証をはずすのが慣例だった。ところがたまに営業出身の社員などの中には自分は誇りをもって
社員証をつけているので絶対に外さないなどという勘違い愛社精神を発揮する者もいた。現在ではあらかじめアポとりをして
入口でチェックを受けてからゲートを通過して各フロアに行き、廊下で相手が出てくるのを待って会議室で話をするようになっている。
さらにコロナ感染が広まってからは折衝もリモート会議となっている。
金融庁の検査官のこと。現在ではよほどの不祥事でもないかぎり金融庁が直接会社に乗り込んで検査をすることはないが、
以前は保険会社は数年間隔で定期的に金融庁検査局の検査を受けていた。この検査のために保険会社に来る検査官をこう呼ぶ。
保険会社間の会話で「お客様がいらっしゃる」といったら金融庁検査が入ることだった。
最近はヒヤリングと称して「事情」を聞くことがほとんどである。
金融庁が保険会社から情報を得る方法には保険業法に基づく報告徴求命令と保険業法には基づかないヒヤリングがある。
報告徴求命令が出た場合は従わないと処分の対象になるため保険会社はいやおうなしに従わざるを得ないが、
ヒヤリングは任意なので答えたくなければ答えなくてもよい。
とは言っても、これは表向きの話で実際に保険会社が答えないことはほとんどない。
金融庁が頻繁に発するのはヒヤリングであり、報告徴求命令は伝家の宝刀なのでめったなことでは出さない。
ヒヤリングよりもっと軽いのが単なる問い合わせで、係官から担当者に直接電話で質問されることがある。
この単なる質問が来た場合でも保険会社では担当者が気軽に答えることはなく、ほとんどの場合上司と相談してから答える。
なぜならそれで業務の実態が知れて、さらに大事に発展する場合があるからである。
金融庁がヒヤリングを行うときはわざわざ任意なので答えたくなければ答えなくてもよいという注釈を付けるが、
これを真に受ける保険会社はほとんどない。
何故なら答えたく有りませんといえば金融庁はその理由を調べはじめ、最終的には報告徴求となるからである。
任意であろうとなかろうと金融庁から質問が来たときには保険会社の担当者はかなり緊張するのである。
契約が実際には存在しないのに、契約計上の処理をすること。当然保険料は入ってこない。
営業成績を詰められている場合に架空計上で時間かせぎをして、その間になんとか本物の契約を取ろうとするのである。
架空の契約なのでバレてしまうリスクもあるが、バレる前に解約してしまえばよい。
気の弱い営業社員がノルマに耐えかねてこれをやってしまう。
自動車の車検のときには自賠責保険(強制保険)が付いていなければなりませんが、保険を契約せずに 連番となっている領収書綴の一部を使わずに残しておき、事故がなければ書損(書き間違い)として廃棄し、 事故があったらそこに後から契約を書き込んで使うという保険金詐欺。
お寿司ではありません。契約獲得量などを上司と部下あるいは会社と代理店が約束すること。
部下の場合はむりやり約束させられる場合が多く、代理店の場合は有利な交換条件をエサにする。
もちろん、コンプライアンス上好ましいものではない。
既存の契約を契約始期に遡って取り消し、条件を変えて入力しなおすこと。 もともとの契約条件が間違っていて訂正が効かない場合に行うが、 コンピュータシステムの貧弱な会社ではシステム上の不備で異動が行えない場合に取再を使ったりすることもある。 しかし、異動と取再では契約上の意味が異なり、取消だと契約の異動履歴も保存されないので好ましくない。 いずれにしても不祥事の原因となるため金融検査などでは重点的にチェックされる。
戦後長らく損害保険は独占禁止法適用除外で金融自由化までは業界は20社による独占体制が守られてきました。
ただ大きい会社と小さい会社ではいろいろ事情が異なるため保険会社は規模別にグループを作って情報交換や共同作業等をおこなっていました。
その際に業界上位で損害保険協会長を輪番で受け持つ5社(東京海上、安田火災、大正海上、住友海上、日本火災)を大手5社、
戦後作られた会社(朝日火災、太陽火災、東洋火災、第一火災、大同火災)を新設5社、
月掛保険を売っていた会社(興亜火災、日動火災、富士火災、大東京火災、共栄火災)を月掛5社または動産5社と呼びましたが、
これ以外の会社(千代田火災、同和火災、日産火災、日新火災、大成火災)をノーマル5社と呼びました。
東京海上と日動火災は現在の東京海上日動火災です。
安田火災、日本火災、興亜火災、日産火災、大成火災は現在の損保ジャパンです。
大正海上と住友海上は現在の三井住友海上保険で日本火災、大東京火災、千代田火災、同和火災、太陽火災はあいおい損保です。
東洋火災はセコム損保、朝日火災は楽天損保、第一火災は破綻しました。
保険会社は新保険の販売、事業範囲の拡大、資産運用方法の変更など保険事業上の重大な変更を行うときは監督官庁(金融庁)から認可を受ける必要があります。
認可を受けるには認可申請書という書類を作成して変更の必要性や変更の内容などを記載し監督官庁に提出しますが、
この書類につける表紙(表題、社名、提出日などが書いてある)を鑑(かがみ)といいます。
昔(金融自由化が行われる前)は保険は独占禁止法の適用除外だったので、新しい保険を開発した会社(主に大手会社)は全部の会社にその内容を開示して
全部の会社が一斉に認可を取得しました。
その認可申請書類はすべての会社で内容が同一だったので一番上に開発会社の書類を置いてその下には他の会社の鑑だけを付けて認可申請をしていました。
これを鑑申請と言っていたのですが、鑑と鏡の発音が同じなのでミラー申請と言ったのです。もちろん隠語です。
内容的に問題のない認可申請で急を要する場合も、鑑だけ提出して認可をもらい、後から正式書類を届けるなんてこともあったようです。
日米保険協議による生保損保相互参入のための認可申請でもアメリカとの協議に間に合わせるためにこれが行われたとの情報もありました。