リスク量の統合

 

保険会社の抱えるリスクには保険引受けに関するリスク以外に資産運用のリスクやら事業運営上のリスクなどがあります。

保険引受リスクも自動車保険、火災保険、傷害保険などの種類に分かれ、それぞれのリスクの中もまた細分化されます。

このようにいろいろな種類のリスクがありますので、会社全体のリスク量を計算するにはそれぞれのリスク量を統合して考える必要があります。

また、リスク同士でもお互いが関連して発生するリスクもあるし、他と全く無関係に発生するリスクもあります。

例えば自動車事故が起きた場合に人身傷害と車両の損害は同時に発生する確率が高いですが、

自動車事故と火災はまったく関係なく発生するため、これらのリスクのリスク量を統合する場合には多少複雑な計算をしなくてはなりません。

つまり、大きな自動車事故と大火災が同時に発生する確率は小さいため、

リスク量として考えたときに自動車保険と火災保険の統合リスク量は自動車保険単体のリスク量と火災保険単体のリスク量を合計したものよりは小さいのです。

これがもし自動車の人身傷害と車両損害のリスク量だとしたら、これらの統合リスク量はそれぞれのリスク量の合計値に近いものとなります。

この関係は直感的には以下のようになります。

 

テキスト ボックス: 火災リスク:Y

テキスト ボックス: 自動車リスク:X
 

 


独立なリスクを座標の縦軸と横軸に置き換えて

横軸を自動車リスク、縦軸を火災リスクとすると(自動車+火災)リスクは縦軸と横軸からなる

直角三角形の斜辺となり、ピタゴラスの定理により(自動車+火災)リスクの2乗は

自動車リスクの2乗と火災リスクの2乗に等しくなるため

自動車リスク量を、火災リスク量を(自動車+火災)リスクをとおくと

これより、(自動車+火災)リスクはとなります。

これに対して強い相関がある場合(相関係数が1に近い)は同時に損害が発生することが多いので、

例えば自動車事故の人身傷害リスクを、車両損害リスクをとおくと統合リスクはとなります。

 

これはあくまでも確率論を使わない直感的説明で、正確にはリスクの統合は確率論の分散の式から求めます。

リスクのリスク量は分散(平均値からの距離の2乗の平均値)

または標準偏差(分散の平行根)で表しますので統合リスク量は

 となり(は共分散と呼ばれる関数です)

が独立ならば共同分散が0となるので

すなわちとなり

の相関係数が1ならばとなる。

もっと詳しい説明はこちら(数理的説明