アクチュアリーは保険をかけない

保険関係者(特に営業関係)の間でアクチュアリーは保険をかけないと言われますが、 実際には保険をかけないわけではなく家には火災保険、車には自動車保険、海外旅行に行くなら 海外旅行傷害保険など必要な保険はかけますし、家庭をもっているなら自分が働けなくなるリスクに備えて 家族のために生命保険や医療保険は当然かけます。

しかしGNP(義理、人情、プレゼント)で攻めてくる生命保険の営業から保険を買うことはありません。 それは営業社員や外務員などがどんなに保険の必要性を説いて購入を勧めても自分のリスクは金額にしていくら位になるか自分で計算できるからです。 それに良心的な営業なら必要最小限の保険を奨めるかもしれませんが、保険の売上で自分の待遇や収入が決まるセールスは 「お客様の安心のため」と称して不相応に高いプランを提案する場合が多いからです。 某生命保険会社の営業講習で社員が「お客様の収入から考えてあきらかに高すぎる保険を勧めてもいいでしょうか」と講師に尋ねたら 「最後はお客様が自己責任で判断されますから自信を持って勧めてください。」と言われたとのことです。 こんな講習を受けたセールスを信用して保険を任せたら大変なことになります。

営業保険料(販売価格)はリスクを金額に換算した純保険料に販売手数料や社員の給料や会社の利益などが 加算されているのでかなり割高になっていて、損害が起きたときに自分で支払う覚悟と資金があれば 保険をかける必要はありません。逆にどうしても損害の支払いを避けたいのであれば当然保険をかけるべきです。

保険会社の一般社員は営業の要求や営業から頼まれた上司からの圧力でいやでも保険をかけざるを得ないのですが、 アクチュアリーの上司は数理業務の責任者でありアクチュアリーである場合がほとんどなので 会社から圧力をかけられることもありません。アクチュアリーが会社から圧力をかけられるような 会社は保険計理人の独立性が保証されない不健全な会社の可能性が高いので避けたほうが無難です。

アクチュアリーは会社をやめてもアクチュアリーだがアクチュアリー会をやめるとタダの人という 言葉があるくらい社員であることよりもアクチュアリーであることにプライドがあるので会社の思う通りには動きません。 需要に比べて圧倒的に人数が少ないので会社を辞めても露頭に迷うこともありません。 会社から圧力をかけられて居心地がわるければ辞めてしまいますから強引に保険を買わされることもありません。 日本アクチュアリー会資格試験の全7科目に合格すると正会員となり保険計理人や年金数理人となることができますが、 5科目以上に合格した準会員や1科目以上合格した研究会員でも相応の数理業務はできます。 社員が正会員になれば羽が生えて飛んでいく(ひとり立ちできるので会社をやめてしまう)といわれ、 待遇を上げなくてはならずコストがかかるので、社員が保険数理を勉強して研究会員や準会員となるのは奨励しても 正会員となるのは奨励しない会社もあるくらいです。 そういえば自衛隊のパイロットも民間に転職できないよう退職するときに免許を置いていけと言っていたことがありました。 そんな訳でアクチュアリーは必要性を感じない保険はかけませんし、会社や営業からかけさせられることもありません。 嫁の話では路上で強引な保険勧誘にあったときに義父はアクチュアリーですと言ったら引き下がったそうです。