保険で混同しがちなのが保険料と保険金で、まぎわらしいため新聞記事などでも間違って使われていることがありますが、 これに保険金額が加わるとさらにやっかいになります。。 保険料は契約者が保険を買うために保険会社に支払う代金で、保険金は事故が起きたときに保険契約に従い保険会社が支払うお金です。 当然保険料よりは保険金のほうがずっと大きくなります。保険金は損害額に応じて支払われますが、契約時に定める保険金の最大値 (つまり最大の損害を被った場合の保険金)が保険金額です。したがって原則として保険金額を超えて保険金が支払われることはありませんが、 火災保険などでは費用保険金といって損害保険金とは別に損害を受けたことに付帯する費用(例えば火災の際の仮住まい費用など)を支払う場合があります。
保険料の計算はその種類の保険契約全部の保険料の合計が全部の支払保険金の合計に等しくなるように決められますが、 これを収支相当の法則といい、保険会社の社員が入社して最初に習う保険の原理です。 多くの契約を集めると「大数の法則」が働いて保険金の支払が安定し、 多くの人から一定の率で保険料を徴収すれば保険の加入者全員から集めた保険料と事故にあった加入者に支払う保険金の収支が一致するというわけです。 「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」ともいわれる保険の基本原則です。これを算式にしてみると
保険料の総額
=1契約あたりの保険料の平均値×全契約件数
=保険金の総額
=1事故あたりの保険金の平均値×事故件数
となります……①
ここでいう保険料は純粋に保険金の支払に使われる部分だけで純保険料といいます。 これに代理店に支払う手数料や会社の社費(人件費、物件費)、危険を負担する報酬部分である利潤などを加えた 実際に保険販売で使用される保険料を営業保険料といいます。 純保険料を保険金額で割ったものを純保険料率といいます。
上記①の式は純保険料の計算ですが、これを営業保険料で書き直してみると
営業保険料総額=支払保険金合計+社費合計+代理店手数料合計+利潤
これを変形すると
営業保険料総額 =(総保険金総額×純保険料率) ……支払保険金合計
+(総保険金額×社費率) ……社費合計
+(営業保険料総額×代理店手数料率) ……代理店手数料合計
+(営業保険料総額×利潤率) ……利潤
さらに左右の項を入れ替えて変形すると
営業保険料総額×(1-代理店手数料率-利潤率)
=総保険金額×(事故発生率+社費率)
両辺を総保険金額で割ると
営業保険料総額÷総保険金額
=(事故発生率+社費率)÷(1-代理店手数料率-利潤率)
ここで営業保険料総額を総保険金額で割ったものは保険金額あたりの保険料となり、これを営業保険料率と呼ぶので、
営業保険料率=(純保険料率+社費率)÷(1-代理店手数料率-利潤率)
となります。
純保険料率は保険の種類によってさまざまですが、社費率は効率のいい会社と悪い会社の差が出ます。 保険の教科書では通常、社費率は単位保険金あたりの率を使いますが、実務では保険料比例として扱われることがほとんどで、 現在の日本の会社では保険料に対する社費率は30~40%くらいです。 利潤率は5%が多く使われますが、理論上は危険負担の対価なので危険の分布により変動するべきものです。