通常、会社の中でお金の流れを管理する仕事を経理といいますが、保険会社には経理以外に計理という仕事があります。 話し言葉では両方とも「けいり」で、しかも両方の意味が微妙に近いことがあるので、経理のことを糸偏けいり、計理のことを言偏けいりと使い分けたりします。 たとえば会話の中で「ほけんけいり」といったらそれは「いとへんけいり」ではなく「ごんべんけいり」のことです。
では経理と計理はどうちがうのでしょうか。 経理というのは普通の会社でも使われるもので、実際のお金の出入りを管理する仕事ですが、 計理は保険会社特有のことばで、一定の条件(金利、死亡率や事故発生率、解約率など)の下に将来のお金の出入りを予測して、 そのためにある時点で持っていなければならない金額(現在価値)を計算する仕事をいいます。 そのある時点が契約開始時だとするとその金額はその保険契約の一時払保険料となり、契約開始後だとその時点での責任準備金となります。 ただし、ここで言っている保険料は純粋に保険金を支払う原資だけのもので純保険料と呼ばれ、実際に販売する価格(営業保険料)はこれに 代理店の手数料や保険会社の社費を加えたものです。
経理を行うのが経理部または主計部といわれる部署で、それを監査するのが会計士ですが、 計理を行うのは経理部または数理部で、それを監査するのは保険計理人です。 保険計理人は将来収支分析を行い保険会社の責任準備金(将来の保険金の支払にあてるべき積立金)が不足していないか、 配当額が適正で契約者に公平に分配されているか、会社は大規模災害の支払に対応できるだけの資産を持っているか、 さらに損害保険会社の場合には既に発生した事故の将来の支払に備えた積立金(支払備金といいます)の水準が不足していないかを確認します。
従来の会計制度では決算時に積み立てる責任準備金の計算の条件は固定されていましたが、 国際会計基準(IFRS)が導入されるとこの条件は実態に合わせて変動し、この条件による将来収支が直接決算に影響するようになるので、 経理と計理の関係はより密接になってきます。 また、すべての資産と負債は経済価値で評価されるので、従来のように含み益を吐き出すことで決算を取り繕うことができなくなります。 会計年度の終わりにその年度の収支を総括するのが決算でそれを行う仕事は経理ですが、 そのときに将来の支払に備えて積み立てるべき責任準備金を計算する仕事は計理です。