経済価値

 経済価値とは資産や負債を考えるときに将来収入あるいは支出するかもしれない金額の確率やその支払時点までの資産運用で
期待できる収入を考慮したその資産や負債の現在の価値をいいます。たとえば保険料は将来起こるかもしれない損害に対して
支払われる保険金の対価を契約時に支払うものですから、これは経済価値といえるものです。
保険料が経済価値ならば、その保険料を積み立てておく責任準備金も経済価値であるべきなのですが、現在そうはなっていません。
何故なら現在の責任準備金のメインは未経過保険料といって保険料を経過期間により按分しただけの単純なものだからです。
長期保険の保険料は予定利率で割り引いてありますが、世の中の金利が動いても予定利率は変わりません。(これをロックインといいます)
保険料は契約時点でのリスクを評価したものですから、その時点では経済価値になっていますが、時の経過とともに将来のリスク
は変化するので経済価値から離れてしまうことになります。たとえば昔契約された長期の火災保険の保険料では地球温暖化による
自然災害リスクなどは考慮されていないのです。責任準備金を未経過保険料として計算するとこのリスクは入ってきませんが、
経済価値ベースの保険負債として計算するとこの自然災害リスクも反映されてくるのです。
 全世界の保険会社を監督する省庁の集まりであるIAIS(保険監督社国際機構:日本は金融庁が加入)は保険会社の健全性を
評価する基準として経済価値ソルベンシーを導入しています。通常のソルベンシーマージン規定では保険会社の健全性は保有契約高に 一定の係数をかけて算出しますが、経済価値ベースのソルベンシーでは将来の様々なリスクが計算に反映されてきます。
この規制は2025年には日本でも適用されることになっているので日本の保険会社はそのための準備に入っています。