解除権

 保険契約は契約者が保険の申し込みを行い、保険会社が引受けを承諾したときにその効力が生じ、
1.終了、2.失効、3.解約、4.解除
によりその効力が消滅します。 これ以外に契約の無効というのがありますが、これはそもそも契約に必要な要件を欠いているか 間違っていたため契約が無効であり、当初から契約が成立していないことをいいます。 契約は成立していないのですから、払い込んだ保険料は全額変換されます。

1.終了とは保険期間の終期が到来した場合(満了)や約款に定める終了(全損失効)などです。

2.失効とは約款に定める理由により保険期間の途中で契約が効力を失うことです。

3.解約とは契約者が解約手続きをとった場合で、保険会社と契約者が合意の上で契約を消滅させること(合意解除)です。

4.解除とは約款に定める権利で、契約者あるいは保険会社が一方的に契約を消滅させる権利を行使することです。



 昔の火災保険約款には保険料不払や告知義務違反などによる保険会社からの解除権は規定されていましたが、 契約者の解除権が規定されていませんでした。 何故なら契約者が解除する場合は解約の手続きをとれば済んだからで解除権を行使する必要がなかったからです。

 ところが住宅ローンなどで長期火災保険に質権が設定されるようになると問題が生じてきました。 住宅ローンは債権保全のためローン対象住宅に抵当権を設定しますが、抵当物である住宅が火災になった場合に備えて 借り主に貸付期間に対応した長期火災保険をつけさせてそれに質権を設定していたのです。 もし住宅が火災で焼失しても支払われる保険金に質権が設定されていますから、貸付金は保険金で返済されます。 返済が滞り住宅が競売にかけられてしまった場合でも火災保険はそのままなので焼失すれば保険金が新しい所有者に支払われます。 これは保険の目的が移転したときには保険に関する権利関係も同時に移転したとみなされるからですが、 火災が起きなかった場合に新しい所有者が保険を解約できないという問題が生じるようになりました。

 保険の解約は保険会社と契約者の合意による解約で一方が解約の意思表示をし、それに対して他方が合意をする必要があるのですが、 保険の目的の移転で権利関係が移転するとしても意思表示は一身専属の行為であり移転しないからです。 すなわち以前の持ち主が解約の意思表示をしないかぎり保険は解約できなかったのです。 ここで、この場合の解約の意思表示が形成権(法律効果を生じさせる権利)かどうかが議論されましたが、 弁護士見解では形成権とはみなせないという結論だったので、約款に契約者の解除権を規定することになりました。 現在の約款では保険会社にも契約者の不誠実など一定の条件の下に解除権を規定したものがあります。  I