相互会社

 相互会社は保険会社だけに許される会社の形態です。 保険毎日新聞に連載されていましたが明治時代に日本の生命保険の基礎を築いた矢野恒太(日本アクチュアリー会初代代表)が 契約者同士の相互扶助という理想を掲げて第一生命を設立したのがその起源だそうです。

 もっとも現在の第一生命は株式会社です。古い保険業法では株式会社からの相互会社への転換は認めても、逆は認めていなかったのですが、 新業法になって株式会社への転換が認められるようになり、第一生命も株式会社に転換しました。 何故、理想だったはずの相互会社から株式会社に転換するかというと、相互会社は相互扶助というその精神から営利目的の行動は認められないので、 資金調達などが難しく、金融業としてやっていくには制約が大きすぎるからです。

 また、相互会社は株主総会に代わって社員総代会というのをやりますが、 この社員総代を選ぶ手続きが不明朗で経営陣に都合のよい人間ばかりを選んでいたなどという話もあります。 日本の会社によくある形式的な社外取締役や監査役を置くようなものです。 株式公開などをしていませんからどうしてもディスクローズが曖昧になり、経営が不透明で内部統制などにも問題がありそうです。 そういった観点から金融庁は株式会社に転換するように促しているようですが、 なかなかそれに応じませんから経営陣にとっては相互会社であるメリットはかなりものもがあるのでしょう。

 相互会社は契約者が社員で株主配当がありませんから、剰余はすべて社員に分配されるか会社にストックされます。 生命保険は超長期契約でその資産は長期の運用ができますから、ここから生じる利益は膨大なものですが、投資先を間違えると命取りです。 バブル崩壊時には渋谷近辺にあった生命保険会社(渋谷グループと呼ばれていました)がいくつも破綻してしまいましたが、 いずれもそれまで不動産投資で高収益を挙げていた会社です。 つまり、収益を上げるためにリスクを取り過ぎていたわけです。 これ以後ソルベンシーマージンなど保険会社の健全性についての基準が厳しくなり、 最近はリスクコントロールが金融機関の最重要課題となっています。