損害保険会社の決算

 普通の事業会社では業績がよければ収益が増加するため決算はよくなり、逆に業績が悪化すると決算も悪化します。 しかし損害保険会社の決算では責任準備金の積立があるため、業績と決算は比例しません。

 保険契約が成立したときには保険会社は保険料を収入しますが、そこから代理店に手数料を支払い、 また保険募集や証券作成などの新契約費用がかかります。 保険期間の長さや契約時期によっては契約時に収入した保険料のほとんどを責任準備金として積み立てなければならないこともあり、 いくら保険料をかせいでも新契約費や責任準備金積立などの出費のほうが大きく、かえって損失が増えたりします。

 逆に業績が悪化して保険料収入が減っても過去の責任準備金の取り崩しが発生するため、利益が出たりします。 このため、業績が伸びているときの決算は悪く、業績が悪化すると決算が良くなるという不思議な現象が現れます。

 さらに外資系の保険会社の場合には本国にある親会社が再保険を使って決算操作をやる場合があるので、 決算を見ただけでは業績が良いのか悪いのかさっぱりわからない場合もあります。 日本にある子会社の決算が良くなりそうなら事故の少ない優良契約を再保険に出させて親会社が取ってしまい、 逆に決算が悪くなりそうなら子会社に支払う再保険の手数料を上げていわゆるミルク補給をします。 このような決算操作は本来日本で支払われる所得税を本国に送金したとみなされ、 国税庁から追徴課税されて裁判になったりすることがあります。

 また保険会社に限ったことではありませんが、本業での決算が悪い場合は簿価より価格が高くなっている手持ちの債券などを売って いわゆる益出しをして決算を取り繕う場合がありますが、これは現在の日本の企業会計制度がそうなっているからで、国際会計基準が 導入された場合は決算は会社の時価額の増減を反映するので、益出しで決算を操作することはできなくなります。