異常危険準備金

 日本の保険会社は大きな事故に備えて異常危険準備金を積み立てます。 通常は収入保険料の一定割合を積み立てますが、自然災害を担保する火災保険などでは確率分布を使った方法も併用し、 どちらか大きいほうを積み立てます。では、この異常危険部分はどうやって保険料に反映するのでしょうか。

 保険料の計算は担保するリスクが一定の確率分布に従っている前提で計算され、 その金額はその分布の平均値ですが、異常危険部分はその分布の形(分散)から計算されます。 つまり、保険事故の金額の多くが平均値の近辺で起きるようなリスクなら異常危険ためのファンドは小さく、 保険事故の金額のばらつきが大きいリスクではファンドは大きくなるわけです。

 いずれにしても、純保険料は事故の発生確率(期待値)から計算しますので、危険の変動部分である異常危険準備金は 純保険料以外の部分(付加保険料)の中から積み立てることになります。 異常危険準備金だけでは積み立てが不十分な場合には再保険を手配したりして保険会社は支払能力の維持に努めます。

 異常危険準備金は責任準備金ではありますが、負債というよりは異常なリスクに備えた資本としての要素が強く、 ソルベンシーマージンの計算では資産としてカウントされます。 また、異常な損害が発生していない場合でも当局に届け出れば取り崩しができるため、 決算の苦しい保険会社が異常危険準備金を取り崩して利益としてしまうこともあります。