損害率

 損害率は保険会社の経営状態を見る重要な指標で、支払保険金を収入保険料で割ったものです。 単純に1年間の支払保険金を収入保険料で割ったものはリトンベイシス損害率と呼ばれ、簡単に計算できるのですが、 収入保険料と支払保険金が長期間安定している場合以外は損害率が実態と乖離するため使用には注意が必要です。
リトンベイシス損害率がリスクの実態を表さない理由は保険料と保険金の対応がとれていないからです。
もし保険料を3年分もらっていて、その年に事故が起きた場合は、1年分の保険料をもらっていた場合と比べると、 その年度の損害率は3分の1になってしまいます。この誤差は3年分の保険料と1年分の保険金を使って計算したためです。
したがって、これを防ぐには保険料と保険金を期間対応させなければなりません。 一番簡単な方法は保険期間がすべて終了してから、その期間に支払った保険金を保険料で割るもので、 これをポリシーイヤーベイシス損害率といいます。
ポリシーイヤーベイシス損害率はロスコストを正確に表現しますが、保険期間が終了し、さらに保険金の支払いが すべて終了しないと損害率が計算できないので損害率を知るのが遅れてしまい不便です。
このためすぐに計算ができて、なおかつ保険料と保険金の期間対応ができるようにしたものが アーンド・インカードベイシス損害率といわれるものです。
これは発生保険金(インカードロス)を既経過保険料(アーンドプレミアム)で割って計算します。 発生保険金とはその時点ですでに支払った保険金(支払保険金)と今後の支払いを見積もって積み立てる金額(支払備金)の合計です。 既経過保険料とは保険期間のうち既に過ぎてしまった期間に対応する保険料で、例えば3年契約の1年が過ぎていたら、 既経過保険料は収入保険料の3分の1です。
実際には損害率は契約毎ではなく保有契約群団に対して計算し、各保険契約の始期は会計年度の中で分散していますので、 当該会計年度の発生保険金と既経過保険料は以下のように求めます。

当年度発生保険金=当年度支払保険金+当年度支払備金-前年度支払備金
当年度既経過保険料=当年度収入保険料+当年度未経過保険料-前年度未経過保険料

未経過保険料は保険料算出方法書に記載された方法で計算された保有契約の残り期間に対応する保険料です。 この方法で計算された損害率は比較的正確にリスクの実態を表しています。