動きの見えないCDやMDなどと違いレコード盤は回転しているところや演奏している針の位置が見えます。
音飛びやスクラッチノイズを拾うこともありますが、レコード盤の回転を見ながら音楽を聴くのも楽しいものです。
針をレコードの正しい位置に置かなくてはならないので、昔のステレオセットでもレコードプレーヤーには照明がついていました。
私のオーディオラックではターンテーブルの照明はE10というタイプの豆電球で行っていました。
これは110V-5Wという電球で昔のラジオや測定器のパイロットランプ
(電源がONになっていることを示す照明)に使われるものでしたが、現在はほとんど使われていません。
この電球が寿命で切れてしまったので秋葉原の専門店に買いにいきましたが、もう専門店にもおいてありませんでした。
目的の電球を入手できず、代替案を考えなら秋葉原を歩いていたら、
半導体を扱う店で電球色発光のLED(発光ダイオード)を見つけたので、これで照明を行うことにしました。
このLEDの出力は1Wですが、LEDの発光は電球の6倍程度の明るさがあり、6Wの電球と同等になるので、
従来の照明の代わりとして使えるはずです。
電球は交流100Vで動作しますが、LEDの動作電圧は直流2.5V~3.5Vなので、電源用にDOCOMOの携帯電話の充電器を使うことにします。
この充電器は5.8Vの直流を発生します。その他LEDドライブに必要なパーツは以下のとおりです。
左からDOCOMOの携帯電話充電器、LED、パワートランジスタ、オペアンプIC、抵抗器、可変抵抗です。
このLEDは350mAの電流で駆動する必要があり、常に流れる電流が350mAになるようにコントロールする必要があります。
電源の充電器は5.8Vを供給します。電流は350mAなので回路全体で消費する電力は
回路の要となるのはオペアンプとよばれるIC(集積回路)で上記の三角形の記号で表されている部品です。
オペアンプの回路は差動増幅器というプラス入力とマイナス入力を持つアンプで、2つの入力の差に比例した出力が得られるものです。
さらに以下の図のようにひとつのICの中には上記の差動増幅器の回路が2つ入っています。
実際のICの形は以下のとおりで、足の番号が回路図の中の端子番号に対応します。
今回必要な差動増幅器はひとつだけなので、ICチップに入っているもうひとつの差動増幅器はもったいないけど使いません。
とりあえず部品を接続し、回路を組んでテストしてみます。
ICやトランジスタの接続にはハンダ付けがされていませんが、これはワイヤーラッピングという方法で線を巻きつけるだけで配線しています。
実際に回路を組み込むので、長時間の使用に耐えるように電流の多く流れるところは太い線に替えてハンダ付けし、
まわりの機器は電球照明なのでターンテーブルのところだけ白っぽい光となりますが、明るさは十分です。
回路の設計
通常の室内照明用には電球と差し替えられるようにコントロール回路を内臓したLED電球が売られていますが、
もともとの豆電球が特殊な仕様だったため、この部分は自作しなければなりません。
まず、定電流回路の設計からはじめます。電流の制御はパワートランジスタで行いますが、
このパワートランジスタに定電流動作を行わせるためにはパワートランジスタに流れる電流を検出して、
その電流が一定になるようにフィードバックする回路が必要です。
この回路は上記の部品を組み合わせるだけで作ることができ
以下のような簡単な回路図になります。
5.8(V) × 0.35(A) = 2.03(W)
となり全体では約2Wの消費電力となります。
このうち1WはLEDが消費するので、残りの1Wをパワートランジスタと0.5Ωの電圧検出抵抗で消費することになりますが
抵抗が消費する電力は
0.5(Ω) × 0.35(A) × 0.35(A) = 0.06125(W)
にすぎません。
つまり大部分を電流を制御するパワートランジスタが消費することになり,
電圧が変化してもパワートランジスタの消費電力を変化させることで電流を一定に制御することができます。
ここで使用するパワートランジスタは2SC3964といい最大2Aまで電流を流せるものです。
今回使ったICはLM358というもので、チップの中は以下のように複雑な回路が組まれています。
プラス入力は信号がそのまま増幅されて出力され、マイナス入力は信号の極性(プラスマイナス)が逆転して出力されます。
したがってプラス入力とマイナス入力に同じ信号が入ると出力はゼロになります。
この定電流回路ではプラス入力は可変抵抗に接続され、マイナス入力は電圧検出抵抗に接続されています。
そして差動増幅器の出力はパワートランジスタのベースに接続されています。
このような回路では可変抵抗の電圧と電圧検出抵抗の電圧の差を打ち消すようにパワートランジスタが制御されます。
可変抵抗の電圧は一定なので、電圧検出抵抗の電圧も一定となり、このとき流れる電流も一定となります。
このとき電圧検出用抵抗にかかる電圧が0.175Vになるように可変抵抗を調整すると電流は
0.175(V) ÷ 0.5(Ω) = 0.35(A)
となります。
技術の進歩とは恐ろしいもので、このような多数のトランジスタを組み込んだ複雑な回路を持つICが20円程度で手に入るのです。
回路のテスト
これで実際にLEDを光らせて回路に流れる電流を350mAになるように可変抵抗を調整します。
回路の実装
パワートランジスタは放熱用のアルミ板に取り付けます。
完成
電力は1Wで従来の1/5ですが逆に明るさは1.2倍になっています。